秋田県内企業における経営者が有する人材育成に関する意識と投資の実態を調査し、人的資本経営の推進の手がかりを明らかにし、秋田県内企業のみなさまに将来への展望に必要な情報をご提供すること
プロジェクトマネジメント
齊藤伸英(有限会社サイテック、研究発案者・コーディネーター)
小酒井正和(玉川大学工学部、アンケート調査リーダー)
協力企業
株式会社 秋田銀行、一般財団法人 秋田経済研究所、秋田県商工会連合会、秋田県信用保証協会
参加学生
玉川大学工学部マネジメントサイエンス学科学生、エンジニアリングデザイン学科学生
定例会は毎月第3金曜日13:15〜14:45
定例会キックオフ(2025年4月18日開催)
定例会準備MTG(2025年5月26日開催)
アンケート調査MTG(2025年5月30日開催)
6月定例会 in 秋田県(2025年6月23日開催)
秋田県内企業のアンケート調査
(1)人材管理・組織管理の状況、(2)持続可能な社会へ向けた取り組み、(3)人材・組織の状況、(4)経営成果 などに関わるWebアンケート調査を10月〜11月に実施予定。
アンケート調査の成果に基づく講演会・勉強会
定例会での議論、アンケート調査結果を解析して得られた知見を社会に還元すべく、講演会・勉強会を随時実施。
人が育つ会社は、人が辞めない。だから利益も伸びる。
7月定例会では、人的資本経営の重要性と実践に向けた課題をテーマに、多角的な議論が行われました。参加者からは、企業の持続的な成長や収益向上の源泉として、人的資本への投資の充実が欠かせないとの意見が多く出され、従業員のスキルやモチベーションを高めることが「人的資本への投資利回り」の向上につながるとの見方が共有されました。
議論の中では、人的資本経営を単なる人材育成にとどめず、組織風土の改革やエンゲージメントの向上に結びつけていく必要性が強調されました。特に、従業員一人ひとりが自身の目標や欲求を実現できる環境を整えることが、企業の持続的発展に不可欠であるとの認識が示されました。
さらに、地域の産業構造や企業規模に応じた実践のあり方についても意見が交わされ、日常業務の枠を超えた学びの場である「OFF-JT」の重要性や、経営理念と従業員の方向性を一致させる取り組みの必要性が指摘されました。
今回の定例会は、地域企業が人的資本を軸に競争力を高め、秋田から新たな価値創造を進めていくための手がかりを得る場となりました。
記録担当:小酒井正和(玉川大学)
社員が辞めない会社は、「安心して話せる職場」から生まれる
8月定例会では、従業員エンゲージメントをテーマに、企業がどのように働く人の意欲とつながりを高めていくかについて活発な議論が行われました。参加者からは、経営者と現場の意識のギャップに着目した意見が多く出され、従業員が安心して意見を交わし、主体的に行動できる職場環境づくりの重要性が共有されました。
議論の中では、従業員の退職理由の多くが人間関係や待遇への不満に起因することが指摘され、まずは基本的な環境整備がエンゲージメント向上の前提であるとの認識が示されました。また、地域に貢献しているという実感や、仕事の内容・配属先によってモチベーションが左右される現状についても意見が交わされました。
さらに、上司による指導のあり方も話題となり、感情的な指導よりも、筋道立てて論理的に伝える姿勢が従業員の成長意欲を高めるとの見解が共有されました。加えて、人手不足が若い世代の就職意識に影響を与えているとの指摘もあり、業界全体での発信のあり方を見直す必要性が議論されました。
今回の定例会では、経営者と従業員の相互理解を深め、心理的安全性の高い組織風土をつくることが、エンゲージメント向上と人的資本経営の実践につながることが改めて確認されました。
記録担当:小酒井正和(玉川大学)
エンゲージメント向上の鍵は「信頼関係」と「対話」にあり
10月定例会では、「従業員エンゲージメントの向上」をテーマに、(1)自社の人材育成に関わる具体的な施策、(2)自分にとってエンゲージメントを上げる諸要因について、それぞれの立場から活発な議論が交わされました。議論を通じて見えてきた核心は、エンゲージメントの向上は「信頼関係」なくしては実現しないという点です。特に小規模な組織では、日々の業務における横の繋がりがエンゲージメントの基盤となります。
この信頼関係を育む具体的な施策として、多くの参加者が「定期的なワンオンワンミーティング」の重要性を指摘。上司と部下が相互理解を深める対話の場が、心理的な安全性を高めるという点に関心が集まりました。
また、リーダーが施策の背景を理論的に説明し、メンバーの「納得感」を得ることの重要性も強調されました。
結論として、エンゲージメント向上には、信頼関係を土台とした継続的な「対話」と、丁寧な「説明」を心がけるリーダーシップが不可欠であると確認された、有意義な会となりました。
記録担当:小酒井正和(玉川大学)
人を思う会社は、絆で強くなる
10月定例会では、「人的資本経営と組織風土の変革」をテーマに、企業が人を活かし、組織をどう変えていくかについて、実践的な観点から活発な意見交換が行われました。参加者からは、経営者と従業員の双方の視点に立ち、人的資本経営の重要性やその具体的な進め方を多角的に考える意見が相次ぎました。
特に、経営者が従業員を“家族のように大切にする”という姿勢が信頼関係を生み、組織風土の改革によって新たな価値提案やビジネスの創出が生まれ、その結果として企業の成長力を高めるとの考えが共有されました。単なる制度の導入ではなく、日々の職場の中で「人をどう活かすか」を意識し続けることこそが、人的資本経営の実践における核心であるとの認識も示されました。
今回の定例会は、秋田で人的資本経営を広めていくための次の一歩となり、参加者にとっても、自社の経営を見つめ直し、新たな可能性を考える貴重な機会となりました。
記録担当:小酒井正和(玉川大学)
人に向き合う経営が企業を変える
11月定例会では、「東北地方の人的資本経営の取組」をテーマに、企業における「人」に対する捉え方の変化や人的資本経営の推進に向けた取り組みについて活発な意見交換が行われた。参加者からは、企業がセミナーなどに参加する動機や人的資本経営を取り入れる際のタイミングに関する意見交換が行われました。
議論の中では、人的資本経営に対する意識格差が課題として指摘された。重要性をあまり認識していない経営層に対し、どのように意識改革をすればよいかなどの意見交換がされた。これに対し、意識の高い企業を集め熱源をつくることや、身近な企業での導入実績を示し、実現可能性を具体的に伝えることが必要であると意見が挙げられた。
さらに、人的資本経営を取り入れる際には、事業継承など経営を見直すきっかけが重要であることも共有された。一方で、そのような転機を当面持たない企業にとっては、導入に踏み出しにくい現状があることも確認された。加えて、中小企業では人事担当者を配置していない場合も多く、経営者自身の意識向上が不可欠であるという指摘もされた。
また、リーダーシップ研修の必要性についての意見交換が行われた。多様なバックグラウンドを持つ人材が働く現場では、伝達や指導が難しくなっており、集団における指導力を高めるための研修の必要性が示された。
今回の定例会では、人的資本経営の認識を高めるには、事業継承などの経営を見直す機会づくりと、経営者自身が導入の必要性と実現性を理解することが重要であるという点が明確となった。参加者にとって、人的資本経営の推進に向けた課題と方向性を再確認する貴重な機会となりました。
記録担当:原洋平(玉川大学)
人に向き合う経営が企業を変える
12月定例会では、経営の現場における生々しい「生存戦略」と、アカデミックな「データ分析」が交錯する、極めて濃密な時間となりました。
前半の議論、齊藤伸英氏による27年間の経営体験に基づく提言でした。齊藤氏は人的資本経営について、短期的な成果ではなく「30年先まで企業を存続させるための戦略」であると定義し、人的資本は「磨けば磨くほど価値が向上する」唯一無二の資産であると語りました。印象的だったのは、「組織の活性化を直接のゴールにしてはいけない」という逆説的な指摘です。経営者が優れたシナリオを描いて演じ、社員が自発的に動ける環境を整えた結果、あくまで「副産物」として生まれるものこそが本物のイノベーションであるという視点は、参加者の経営観を揺さぶりました。
後半では玉川大学の学生より、秋田県内の中小企業を対象としたアンケート調査の初期分析が共有されました。秋田県企業の自己評価が大企業向けの先行調査よりも高いという意外な結果に対し、それは地域特性なのか、あるいは意識の高い経営者層特有のバイアスなのか、多角的な議論が展開されました。
「教科書的な理論」と「現場のリアリティ」がぶつかり合う本プロジェクトの醍醐味でしょう。次回も、表面的なトレンドを超えた本質的な議論が楽しみです。
記録担当:小酒井正和(玉川大学)
対話から始まる人的資本経営― 秋田の企業に必要な“人への投資”とは?
1月定例会では、前回に続いて、実務者による議論と学生による研究報告の二部構成で、秋田県企業における「人への投資」を多角的に考えました。
前半は、人的資本経営の基盤となるコミュニケーションをテーマに、上司と部下が対話する「1on1」の意義を共有しました。業務管理や評価のための面談ではなく、信頼関係を築き、心理的安全性を高める対話が、人材の定着や成長につながるという実務者の経験が語られました。
後半は、学生によるアンケート分析の報告をもとに、秋田県企業の人的資本施策の現状を検討しました。経営者の年齢や企業規模による取り組みの違いに加え、「働きやすさ」への配慮が必ずしも人材力や業績の実感につながっていない点がデータから示されました。議論が盛り上がり、記録用のスクショをとるまえに、時間が来てしまって途中退出せざるを得ない方もいたくらいです。
今回も、実務者の経験とデータに基づく分析を往復しながら、自社の取り組みを客観的に見直す視点が得られたと思います。人的資本経営を「考え始めたい」、「具体的なヒントがほしい」というビジネスパーソンにとって、実践につながる学びの場となっていると実感できました。
記録担当:小酒井正和(玉川大学)
次のフェーズへ――人的資本経営をどう根づかせるか
2月定例会では、前半にこれまでの総括を行い、後半に有意義な1 on aを行うために必要となる「ストレスとの向き合い方」について議論しました。
前半では、「人的資本経営に触れて感じたこと」をテーマに、これまでの議論を振り返りながら、次のフェーズ=どう地域に根づかせるかを中心に意見交換を行いました。
学生からは「企業理念の意味が理解できた」、「給与だけでなく“誰と働くか”が重要」といった学びが共有される一方、企業の現場からは「人的投資と業績のつながりが見えにくい」、「賃上げ議論に偏りがち」との意見も提示されました。他にも、小規模事業者への浸透の難しさと、経営計画への明文化や効果の見える化の必要性が示され、参加メンバーによって活発な議論がなされました。
後半は、齊藤伸英さんから、1on1における傾聴の重要性や、良いストレス/悪いストレスの捉え方について情報共有があり、人的資本経営は制度導入ではなく、経営者自身の姿勢と日々の対話から始まるという認識を共有しました。上司が部下の「やる気スイッチ」を推せるようになるためには、上司と部下の関係は決して対等ではないという認識を持ち、強者の立場である上司が部下の話を聞くことが円滑なコミュニケーションのポイントとなることなどが議論されました。
次回は3月17日予定。関心のある方の見学参加も歓迎します。
記録担当:小酒井正和(玉川大学)
対話の質をどう高めるか―自己理解から始まる人的資本経営
3月定例会では、前半に「コミュニケーションに必要な自己理解・他者理解」、後半に人的資本経営をどう現場に根づかせていくかについて実務に即したアイディア検討が行われました。
前半では、齊藤伸英さんから、1on1の質を高める前提として、「自己理解の不足」が大きな課題であるという問題提起がなされました。自分の長所・短所や価値観、感情の傾向を言語化できていない状態では、相手を理解することも難しく、結果として表面的なコミュニケーションにとどまってしまうという指摘です。実際に、自身の特性や対人関係を振り返るワークを通じて、「自分のことを説明できない」という気づきを共有する場面も見られました。
また、他者理解については、相手の言動を感情的に捉えるのではなく、価値観や行動パターンとして捉え直すことの重要性が議論されました。特に「苦手な相手」をどう認識するかという点は、日々のストレスや職場の人間関係に直結するテーマとして関心を集めました。
こうした議論を踏まえ、1on1の本質は、目標設定や評価の場ではなく、「安心して話せる関係性」を築くことにあるという認識が改めて共有されました。心理的安全性が担保されていない状態で、成長や自己実現を求めても機能しないという点は、多くの参加者にとって示唆的だったように思います。
後半では、人的資本経営を地域や企業にどう広げていくかという視点から意見交換が行われました。重要性は理解しつつも、「実践のハードルが高い」、「個人差や組織文化の違いにどう対応するか」といった課題は今後もずっと出てきそうな気がします。
制度や施策の導入に目が向きがちな中で、今回の議論は、人的資本経営の出発点があくまで「日々の対話」にあることを再確認する機会となりました。自己理解と他者理解に支えられたコミュニケーションの積み重ねが、結果として組織風土を形づくり、人材の定着や成長につながっていくというプロセスを、今後どのように経営者のみなさんに理解してもらえるかが重要な課題となるでしょう。
現実的に、社会制度や法などのルールに目が向きがちなところがありますが、今回の議論は、その前提にある「人と人との関係性」に立ち返るものとなりました。制度と現場の現実とのあいだにある見えにくい溝こそが、本質的な課題なのかもしれません。
次回は4月21日の予定です。関心のある方はどうぞお気軽にご参加ください。
記録担当:小酒井正和(玉川大学)
人はコストか、未来への投資か――人的資本経営を“自分ごと”にする一年のはじまり
新年度最初の4月定例会は、初参加のメンバーや学生も加わり、これからの議論の土台を共有する回となりました。まずは、小酒井より「なぜ今、秋田の中小企業に人的資本経営が必要なのか」をテーマに講話が行われました。
議論の出発点となったのは、「人への投資は贅沢ではなく、生き残り戦略である」という視点です。若年層の流出や人手不足が進む中で、「人材の取り合い」だけでは限界があり、いかに人を育て、活かすかが企業の持続性を左右するという問題意識が共有されました。さらに、人的資本は単なる「人材管理」ではなく、理念や戦略と結びついた「経営の設計図」であるという整理も提示されました。
続くディスカッションでは、参加者それぞれの立場から多様な意見が交わされました。特に印象的だったのは、齊藤伸英さんから提示された、「人間関係が離職理由の中心にある」というデータに基づいた経営者としての現場感覚です。一方で、調査結果からは、人材育成と業績の関係が十分に意識されていないという課題も共有され、「人は育つが利益につながる実感が薄い」という経営者側の認識ギャップも浮き彫りになりました。
また、新年度ということもあり、参加者全員による自己紹介と今後の関わり方についての意見交換も行われました。学生からは「企業の考え方を知りたい」「自分の視点とのズレを確かめたい」といった率直な声があり、実務家からは「若い世代の考えが学びになる」との応答もあり、世代を越えた対話の価値が改めて確認されました。
最後に、今年度の運営方針として、参加者の拡張と議論のオープン化があらためて再確認されました。人的資本経営というテーマを、特定の専門家だけでなく、多様な立場の人が持ち寄る「共通言語」にしていくことが目指していきます。
人的資本経営は、制度や手法の話に見えて、その本質は「どんな会社でありたいか」という問いに立ち返る営みでもあります。この研究会は、その問いを一人で抱えるのではなく、他者との対話の中で少しずつ言葉にしていく場です。
現場で使える形に落とし込みながら、地域の企業とともに試行と対話を積み重ねていきます。
次回は5月19日(火)の予定です。次々回は第2週の6月9日(火)の予定となります。
ぜひ関心ある方はお気軽にご参加ください。
記録担当:小酒井正和(玉川大学)